所得税法上の経費
個人商店などのように個人で事業を営んでいる場合は、その事業のために使ったお金は所得税の計算上必要経費となります。
事業所得の場合は 総収入金額-必要経費=所得 なので、必要経費が大きいほど所得が小さくなり、所得税も低くなります。
では、会社員の場合はどうでしょうか。
仕事のための経費は会社が負担する場合がほとんどなので、個人が負担することはあまりないかもしれません。
でも、会社が経費として認めてくれないために、個人として負担しなければならない場合もあるかもしれません。
そんなときは、個人事業主と同様に必要経費として、所得税を低くできるのでしょうか。
税務上の経費とするには条件がある
会社員が仕事のために負担した金額を、所得税法上の経費とする制度は特定支出の控除の特例といいます。
これにはいくつかの条件があります。
領収証を保管しておくなど、個人事業主と共通する条件もあります。
が、特別な条件もあります。
もともと、給与所得の場合は 収入金額-給与所得控除額=所得 と定められています。
この給与所得控除額は給与の額に応じて一律に決められています。
このため会社員(給与所得者)は経費を記録、集計して確定申告をする必要はなく、年末調整で所得税額を算出できるのです。
給与所得控除額は年収300万円だと108万円、年収500万円で154万円、年収800万円で200万円になります。
つまり、給与所得者は経費に相当する給与所得控除額を収入から無条件に差し引いて所得を計算しています。
なので、個人が実際に負担する経費がある程度高額でない限りは、所得税法上の経費とできないのです。
また、その他にも条件があります。
条件1 経費の範囲
この特例が認められる経費を特定支出といい、次に掲げるものに限定されています。
また、それぞれの支出につき会社の証明が必要です。
・通勤費
・転任に伴う転居費
・職務の遂行に必要な技術や知識を得るための研修費
・職務の遂行に必要な資格を取得するための費用
・単身赴任者の帰宅旅費(月4回のまでの帰宅)
・勤務必要経費(具体的には次の3種類)
①職務に関連する書籍、新聞、雑誌等の購入費
②勤務場所で着用を要求される制服、事務服、作業服等の購入費
③得意先等、職務に関連のある者に対する交際費、接待費
条件2 特定支出の額
上記の特定支出の額の合計額が、給与所得控除額の 1/2 を超える場合に、この特例を適用することができます。
その 1/2 を超える部分の金額を、給与所得控除後の金額から控除します。
例
給料・・・800万円
特定支出の合計額・・・180万円
給与所得控除額・・・・・200万円
の場合
1)180万円>200万円×1/2=100万円 なので、適用あり
2)給与所得額 800万円-200万円-(180万円-100万円)=520万円
もし、特定支出の特例を知らなかったら、給与所得は 800万円-200万円=600万円です。
この特例を使って申告すれば600万円-520万円=80万円に税率を乗じて計算した税金が還付されます。
条件3 確定申告
特定支出控除を受けるためには確定申告をしなくてはなりません。
会社の年末調整ではできないのです。
確定申告書には特定支出に関する明細書と各種費用の証明書を添付します。
また、各種費用についての領収証等は添付又は提示をします。
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