概要
通常、相続は上の世代から下の世代への財産の引継となります。
したがって、相続があってから次の相続までは相当の期間があります。
しかし、短期間に相続が続くこともあります。
そのような場合に、相続税の負担が重くなりすぎることを調整するために、相次相続控除が設けられています。
例えば、祖父が10億円の遺産を残して亡くなったとします。
相続人は父だけです。
相続税は4億6千万円としたら、残る財産は5億4千万円です。
そして、数か月後に父も亡くなったとします。
父の遺産は、祖父の残した財産5億4千万円だけだったとします。
相続人は私だけです。
相続税は2億1千万円になり、手元に残る財産は3億3千万円となります。
これは、相次相続控除がないと仮定した場合の税額計算です。
この場合、合計で6億7千万円が相続税として徴収されることになります。
このような税負担を軽減するために、相次相続控除があります。
ちなみに、上記の例に相次相続控除を適用した場合は、2回目の相続税額は0円になります。
適用条件
相次相続控除は次の場合に適用されます。
①被相続人の条件
相続の被相続人が、その相続の前10年以内に、相続(遺贈を含む)により財産を取得して相続税を課されていること。
②対象者
控除を受けることができるのは上記被相続人の相続人です。
相続を放棄した人や相続権を失った人は対象外です。
控除額
相次相続控除は前回の相続から時間が経つごとに控除額が少なくなります。
具体的には次の算式で表されます。
A:被相続人が前回の相続で課せられた相続税額
B:被相続人が前回の相続で取得した相続財産(債務を控除した後の価格)
C:今回の相続における相続財産の合計(債務を控除した後の価格)
D:対象となる相続人が取得した相続財産(債務を控除した後の価格)
E:前回の相続から今回の相続までの年数(1年未満切り捨て)
として、控除額は
A ✖ C /(B-A)✖ D/C ✖(10-E)/10
ただし、式中の C/(B-A)が100/100を超えるときは100/100とします。
先ほどの例のように、相続人が一人で、前回の相続財産を減らしておらず、かつ前回の相続との期間が1年以内だと、前回の相続で課された相続税の全額が控除になります。
例では相次相続控除額は父の負担した相続税額の4憶6千万円です。
ただ、控除前の相続税額2億1千万円より大きいので、実際の控除額は2憶1千万円です。
この記事の初めに「通常、相続は上の世代から下の世代への財産の引継」と書きましたが、
上記の適用条件を満たしていれば、下から上でも、横から横でも、相次相続控除は適用されます。
例えば、私から父、その後に、父から祖父への相続であっても適用されます。
また、妻から夫、その後に、夫から後妻への順に相続があっても適用されます。
コメント