知人が保険金を貰って、困ったことになりました。
山口さん(仮名)は長年住込みの家政婦として太田さん(仮名)宅で働いてきました。
山口さん、太田さん共に70代女性です。
太田さんはご主人と死に別れていましたが、事業を経営していて裕福な生活を送っていました。子供は一人いましたが、結婚して遠い所に住んでいて殆んど交流がない状態でした。
仕事が忙しいかったため、20年以上も前から山口さんを家政婦として雇っていました。
そういう訳で、二人は友人というより、家族のような間柄でした。
太田さんは病気になり、数か月入院した後亡くなりました。
太田さんは生前に山口さんを受取人とした生命保険に入っていました。
山口さんは保険会社から1千万円の保険金を受け取りました。
そして約1年後、山口さんの元へ税務署から連絡がありました。
「相続税の申告と納付をしてください」
知人から紹介された税理士に相談してみると、
・亡くなった人が保険料を支払った生命保険金は”みなし相続財産”となる。
・この場合保険金受取人にも相続税を支払う義務が生じる
・支払う相続税額は全財産に対する保険金額の割合から計算する
ということが分かりました。
それと同時に問題点も出てきました。
・山口さんは相続人ではないので太田さんの他の財産を知ることができない
(当然、役所や銀行に聞いても教えてくれません)
・そのため、相続税額を計算できない
(被相続人の遺産総額が分からないと、相続税額は計算できません)
そこで、税理士が税務署に相談したところ
・太田さんの相続人(子)が申告しているので、その申告書を作成した
税理士に聞いてくださいと言われたそうです。
で、税理士同士で話したのですが。
相続人の税理士は相続人の許可がなければ、教えることはできないと言いました。
それは当然のことですね。
そして、相続人は教えたくないとのこと。
これも当然です。
赤の他人に自分が相続した財産全てを教えるなんて嫌ですよね。
特に近年は個人情報に対する危機意識が高まっています。
税務署も「困りましたねえ」と言うだけで何もできません。
相続税の申告方式自体が”個人情報”という概念が希薄な時代のものなのでしょう。
本当に困ったのは山口さんです。
申告期限が過ぎても何もできません。
もちろん納税意欲と資金はあるのですが。
何もできないまま延滞税だけが増えることとなっていきます。
結局、相続人の税理士が山口さんの支払う税額だけを教えるということで決着しました。
保険金受取人が相続人以外ということは稀にあることだと思います。
皆さんはどうしているのでしょう。
もしかしたら、今回担当をした税務官が、その方法を知らなかっただけかもしれません。
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