雑損控除とは
自分または自分と生計を一にする一定の親族が所有する資産について、災害、盗難又は横領によって損害を受けた場合や、これらに関連してやむを得ない支出をした場合に、一定の所得控除を受けることができます。
これを雑損控除といいます。
雑損控除は繰越せる
雑損控除は、社会保険料控除等の他の所得控除より先に控除します。
所得控除の順番など、控除後の金額に影響ないと思われるかもしれません。
確かに、所得の方が所得控除より大きければ、その通りです。
しかし、所得より所得控除の方が大きいときは、事情が違ってきます。
というのは、雑損控除が大きくて、所得から控除しきれないときは、翌年以降3年間繰越すことができるのです。
雑損控除以外の所得控除は繰越すことはできません。
例
所得金額 200万円
雑損控除額 300万円
他の所得控除額 100万円
正しい順番(雑損控除から)
200万円-300万円=△100万円 ←翌期に繰越
この場合は、他の所得控除は使えずに、切り捨てとなります。
誤った順番(他の所得控除から)
200万円-100万円=100万円
100万円-300万円=△200万円 ←間違い
他の所得控除を先に控除すると、翌期に繰越す金額が違ってしまいます。
損失の発生原因
雑損失の対象となる損失の発生原因は以下に挙げるものに限られます。
①自然現象の異変による災害
震災、風水害、冷害、干害、噴火、落雷等
②人為による異常な災害
火災、鉱害、火薬類の爆発等
③生物による異常な災害
害虫、害獣等
④盗難
⑤横領
雑損控除の対象となる資産
雑損控除の対象となる、損害を受けた資産とは次の①、②のいずれにも該当する資産です。
①資産の所有者が次のいずれかであること
◇納税者本人
◇納税者と生計を一にする親族で、その年の総所得金額等が38万円以下のもの。
ただし、総所得金額等とは、各種損失の繰越控除後の総所得金額、特別控除前の各種分離課税の所得、山林所得、及び退職所得の合計額をいいます。
②生活に通常必要な資産
棚卸資産等の事業用の資産は含まれません。
また、趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的のものも含まれません。
例えば、別荘や、1個又は1組の価格が30万円を超える貴金属や書画等です。
雑損控除の対象となる損害金額
雑損控除の対象となる損害金額は、次の①と②の合計額です。
①資産の損失額
資産の損失額は、損失発生直前の資産の時価と損失発生直後の資産の時価との差額です。
ただし、損失発生直前の資産の時価を「資産の取得価額-減価償却費累計額相当額」に代えて計算することもできます。
この場合の減価償却費累計額相当額とは、その資産の耐用年数を1.5倍した年数に対応する旧定額法により計算した額です。
②災害等に関連したやむを得ない支出の金額
・災害により損壊した資産の取壊し費用や除去費用
・災害により住宅等に流入した土砂等の障害物の除去費用
・災害の拡大を防止するための費用
・資産の原状回復費用(①の損失額を除く)
等が挙げられます
ただし、保険金や損害賠償金によって補てんされる金額は、雑損控除の対象となる損害金額から差引きます。
雑損控除の金額
所得から控除できる雑損控除の金額は、次のいずれか大きい方の金額です。
① 雑損控除の対象となる損害金額-総所得金額等✖10%
② 災害関連支出の金額-5万円
「災害関連支出の金額」とは「災害等に関連したやむを得ない支出の金額」から、盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のために支出した金額を除いた金額です。
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