相続や贈与によって取得した財産に対して、相続税や贈与税を課すためには、その財産の価格を決めなければなりません。
基本的にはその財産を取得したときの時価をもって、その財産の価格とします。
上場株式は、毎日のように取引が行われているので、不動産等と比べると時価が分かり易いと言えるでしょう。
では、具体的には、どの時点の価格が相続税評価額となるのでしょうか。
4つの価格を比較
上場株式の相続税評価額は次の4つの価格のうち、最も低い価格です。
①課税時期の最終価格
②課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
③課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
④課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
課税時期とは、相続の場合は被相続人が亡くなった日であり、贈与の場合は贈与があった日です。
最終価格とは、新聞等に記載されている、その日の終値のことです。
例えば、平成29年8月18日に被相続人が亡くなったとします。
被相続人はA社株式を1万株所有していて、その株価が以下のような場合。
①平成29年8月18日の最終価格 2,100円
②平成29年8月の毎日の最終価格の月平均額 1,900円
③平成29年7月の毎日の最終価格の月平均額 2,150円
④平成29年6月の毎日の最終価格の月平均額 2,200円
A社株式の相続税評価額は①~④のうち最も低い価格である1,900円を単価とします。
よって、1,900円✖1万株=1,900万円 となります。
最終価格がない場合
上記のように4つの価格を比較して、評価額を計算するのですが、課税時期が取引所の休日になってしまい、最終価格がない場合はどうするのでしょうか。
その場合は、課税時期に最も近い日の最終価格をもって①の価格とします。
また、最も近い日が2つあるときは、2つの最終価格の平均値となります。
例1
8月16日 2,060円
8月17日 取引なし
8月18日 取引なし ←課税時期
8月19日 2,080円
この場合は8月19日の2,080円を課税時期の最終価格とします。
例2
8月16日 2,060円
8月17日 2,070円
8月18日 取引なし ←課税時期
8月19日 2,080円
この場合は8月17日の2,070円と8月19日の2,080円の平均値2,075円を課税時期の最終価格とします。
複数の証券取引所に上場している場合
株式によっては、複数の証券取引所に上場されているものがあります。
そのような場合は、納税者がどこの取引所の価格を採用するかを決めることができます。
通常は、税金が安くなるように、最も低い価格の取引所を選択します。
特殊な贈与の場合の評価額
負担付贈与や個人間の対価を伴う取引により取得した上場株式の評価額は、課税時期の最終価格です。
最終価格の月平均額との比較はしませんので、注意してください。
負担付贈与とは、贈与を受ける者(受贈者)が負担を負う贈与です。
例えば、受贈者が株式を譲り受けると同時に借入金を負担する、といった場合が該当します。
例
8月20日にB社株式2万株の贈与を受けると同時に、借入金1,000万円を引受けた。
8月20日のB社株式の最終価格は700円。
贈与を受けたB社株式の評価額は700円✖2万株=1,400万円となります。
また、贈与税の課税対象は、負担した借入金を差し引き、
1,400万円-1,000万円=400万円です。
個人間の対価を伴う取引が贈与とみなされるのは、著しく低い価格の対価で財産を譲り受けた場合です。
例えば、個人間において時価1,000万円の株式を50万円で売買したとします。
形式的には売買取引ですが、税務上は差額の950万円は贈与とみなされます。
例
8月20日にC社株式2万株を150万円で祖父から購入した。
8月20日のC社株式の最終価格は800円。
購入したC社株式の評価額は800円✖2万株=1,600万円となります。
贈与とみなされる贈与税の課税対象は、
1,600万円-150万円=1,450万円です。
コメント