概要
相続税額の計算は少し複雑です。
本来の相続人が法定相続分通りに遺産を分割したと仮定して、計算した税額を合計します(相続税の総額といいます 下記⑦)。
その相続税の総額を実際に取得した遺産額の割合に応じて按分します。
その後に各人の状況に応じた税額控除等をおこなって、納付すべき税額が確定します。
手順
①各人が取得した財産の課税価格を算出
②全員の①を合計する→課税価格の合計額
③遺産にかかる基礎控除額を算出
④課税遺産総額(②-③)
⑤課税遺産総額を法定相続分で案分→法定相続分に応ずる取得金額
⑥各法定相続分に応ずる取得金額×税率→相続税の総額の基となる税額
⑦相続税の総額(⑥の合計額)
⑧各人の課税価格に応じた割合(①/②)
⑨算出相続税額(⑦×⑧)
⑩各種の加算又は減算
⑪納付すべき相続税額
具体的に計算してみます
被相続人 太郎
相続人 花子(妻) 一郎(長男) 次郎(二男) 三郎(三男)
相続財産 預金 9000万円 株式 12000万円 合計 2億1千万円
遺産分割 花子は預金のうち2000万円を取得
一郎は株式12000万円を取得
次郎は預金のうち7000万円を取得
三郎は家庭裁判所で適法に相続を放棄
とします。
① 花子 2000万円 一郎 12000万円 次郎 7000万円
② 2000万円+12000万円+7000万円=21000万円
③ 基礎控除額は 3000万円+法定相続人の数×600万円 です。
法定相続人の数には相続を放棄した人も含めるので4人です。
よって基礎控除額は 5400万円になります。
④ 課税遺産総額は 21000万円-5400万円=15600万円
⑤ ここでは、相続の放棄があった場合にはその放棄がなかったものとした場合の相続人(法定相続人)が法定相続分で按分したものとした場合の各相続人の取得金額を計算します。法定相続人と法定相続分は以下の通りです。
花子 1/2 一郎 1/6 次郎 1/6 三郎 1/6
よって、法定相続分に応ずる取得金額は
花子 15600万円×1/2=7800万円
一郎 15600万円×1/6=2600万円
次郎 15600万円×1/6=2600万円
三郎 15600万円×1/6=2600万円
⑥ 相続税の総額の基となる税額を計算します。
下記の相続税の速算表から対応する税率と控除額を使います。
法定相続人の取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
1,000万円を超え 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円を超え 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円を超え 10,000万円以下 | 30% | 700万円 |
10,000万円を超え 20,000万円以下 | 40% | 1,700万円 |
20,000万円を超え 30,000万円以下 | 45% | 2,700万円 |
30,000万円を超え 60,000万円以下 | 50% | 4,200万円 |
60,000万円超 | 55% | 7,200万円 |
花子 7800万円×30%-700万円=1640万円
一郎 2600万円×15%-50万円=340万円
次郎 2600万円×15%-50万円=340万円
三郎 2600万円×15%-50万円=340万円
⑦ 相続税の総額(⑥の合計額)
1640万円+340万円+340万円+340万円=2660万円
これを実際に相続財産を取得した人の割合に応じて按分します。
⑧ 各人の課税価格に応じた割合(①/②)
花子 2000万円/21000万円→0.10
一郎 12000万円/21000万円→0.57
次郎 7000万円/21000万円→0.33
按分割合の合計が1になるように小数点以下3桁を調整(3桁目が大きい順に切上)
⑨ 算出相続税額(⑦×⑧)
花子 2660万円×0.10=266万円
一郎 2660万円×0.57=1516万2千円
次郎 2660万円×0.33=877万8千円
⑩ 各種の加算又は減算
花子は被相続人の妻なので「配偶者の税額軽減」があります。詳細は省きますが軽減額は266万円です。一郎、次郎については加算、減算はないものとします。
花子 266万円-266万円(配偶者の税額軽減)=0円
⑪ 納付すべき相続税額
花子 0円
一郎 1516万2千円
次郎 877万2千円
コメント