趣旨
相続人たちの税額が一旦決まった後、相続税では各人の状況に応じた税額の控除があります。
例えば、相続人が未成年者であったりすると、20歳になるまでの年数✖10万円が控除されます。
特に配偶者の場合は、手厚い税額軽減措置があります。
これは
①同一世代間の相続のため、次の相続までの期間が短い
②被相続人死亡後における配偶者の生活保障
③遺産の形成に対する貢献
などの理由が考えられるからです。
内容
では、どれくらい税額が控除されるのでしょうか。
控除額は次の算式で計算されます。
相続税の総額✖(A又はBのうち少ない金額)/(課税価格の合計額)
A:課税価格の合計額のうち配偶者の法定相続分相当額
(ただし、16,000万円に満たないときは16,000万円)
B:配偶者の実際の取得価格
全額が控除される場合
上記の算式によれば、以下のどちらか場合には相続税の全額が控除されます。
つまり、配偶者の税額軽減の措置により、配偶者は納める税金がゼロになります。
①配偶者の相続する財産が1憶6000万円以下の場合
他の条件は関係なく、配偶者の相続財産が1憶6000万円以下なら相続税はかかりません。
1憶6000万円を超えていても、次の②の条件を満たせば相続税はかかりません。
1憶6000万円を超えて、②の条件も満たさない場合は相続税はかかりますが、少々超えただけなら、大部分が控除されます。
②配偶者の相続する財産が全体の財産に対して法定相続分以下の場合
配偶者と子供が法定相続人の場合は、配偶者の法定相続分は1/2です。
この場合は、全体の相続財産(課税価格の合計額)が10億円であれば、5億円以下であれば相続税はかかりません。
また、被相続人に配偶者以外の法定相続人がいない場合は、配偶者の法定相続分は1です。
この場合は、たとえ100億円相続しても相続税はかかりません。
計算例
2つのケースを想定して、控除額を計算してみました。
ケース①
相続人(法定相続人) 配偶者、子 2人
課税価格の合計額 2億円
配偶者の法定相続分 1/2
配偶者の取得財産 1憶8000万円
相続税の総額 3,340万円
配偶者の算出相続税額 3,006万円
配偶者の税額軽減額 2,627万円
配偶者の納付税額 334万円
ケース②
相続人(法定相続人) 配偶者、子 2人
課税価格の合計額 10億円
配偶者の法定相続分 1/2
配偶者の取得財産 6憶円
相続税の総額 3億9,500万円
配偶者の算出相続税額 2億3,700万円
配偶者の税額軽減額 1億9,750万円
配偶者の納付税額 3,950万円
ケース①の場合は遺産の9割を配偶者が取得しています。
しかしながら、取得財産1憶8000万円のうち、1憶6000万円に相当する税額が控除されるので、実際に納付する税額は、取得した財産に比べれば僅かな額になっています。
ケース②の場合は配偶者の取得割合は6割ですが、遺産額が10憶円と①に比べて大きいので、取得した財産に対する納付税額の割合は①より大きくなります。
それでも、相続税の総額の50%相当額が控除されるので、納税の負担はかなり軽くなっています。
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