条件
相続税を納める者が未成年者である場合には、相続税額から一定額を控除することができます。
遺産には、未成年者が成人になるまでの生活保障という側面もあるために、この規定が設けられています。
この規定を未成年者控除といいます。
未成年者控除を受けるには次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
条件1 居住無制限納税義務者か非居住無制限納税義務者であること
居住無制限納税義務者とは遺産を取得したときに日本国内に住所がある人をいいます。
また、遺産を取得したときに日本国内に住所がない人のうち次の①又は②のいずれかに該当する人は非居住無制限納税義務者になります。
①遺産を取得した時に日本国籍を有していて、被相続人が死亡した日前5年以内に自分か被相続人が日本に住所を有したことがある。
②遺産を取得した時に日本国籍を有していなくて、被相続人がその死亡した日に日本に住所を有している。
例えば、親子で5年以上海外で暮らしていて親が亡くなり、日本国内にある遺産を子が取得すれば、日本の相続税が課税されます。
この場合、子が未成年であっても、未成年者控除の適用はありません。
ただし、上記の海外がアメリカ合衆国であった場合は「日米相続税条約」により未成年者控除の適用が可能となるそうです。
条件2 法定相続人であること
法定相続人でない孫等が遺言により遺産を取得した場合は、その孫等が未成年者であっても、未成年者控除の適用はありません。
逆に、法定相続人であれば、相続を放棄した場合であっても、遺言により遺産を取得しているときは、未成年者控除は適用されます。
条件3 20歳未満であること
未成年者か否かの判定は相続開始時に20歳に達しているかどうかで判断します。
19歳11ヶ月であれば、1年分の控除が受けられますが、20歳であれば、受けられません。
控除額
控除額は次の算式で計算します。
(20歳-相続開始時の年齢)✖10万円
20歳に達するまでの年数に10万円をかけた額が控除額です。
年数は端数切り上げで計算します。
例えば、相続開始時に15歳10ヶ月であった場合は
20歳-15歳10ヶ月=4年2ヶ月
なので、2ヶ月を切り上げて5年になります。
5年✖10万円=50万円
が相続税から控除されます。
2回目以降の控除額
同じ者が2回以上未成年者控除を受ける場合は、前回の相続において控除しきれなかった金額が上限となります。
つまり、最初の相続において算出した未成年者控除額の全額が実際に控除された場合は、2回目以降は未成年者控除は受けられません。
例1
1回目の相続開始時に10歳で、未成年者控除適用前の相続税が80万円
未成年者控除額 (20歳-10歳)✖10万円=100万円
相続税額 80万円-100万円=△20万円→0円
2回目の相続開始時に15歳で、未成年者控除適用前の相続税が60万円
未成年者控除額 (20歳-15歳)✖10万円=50万円 50万円>20万円→20万円
相続税額 60万円-20万円=40万円
例2
1回目の相続開始時に10歳で、未成年者控除適用前の相続税が200万円
未成年者控除額 (20歳-10歳)✖10万円=100万円
相続税額 200万円-100万円=100万円
控除しきれなかった未成年者控除額はないため、次回以降の相続時には未成年者控除は適用できない。
扶養義務者からの控除
未成年者控除額がこの規定適用前の相続税額より多いため、控除しきれない場合には、その未成年者の扶養義務者の相続税から控除できます。
扶養義務者の相続税とは未成年者と同一の被相続人からの相続に係るものです。
扶養義務者から控除できる金額は、未成年者が控除しきれなかった残額までです。
また、この規定により控除した金額は未成年者控除として、前掲の2回目以降の未成年者控除額を計算します。
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